横浜沖のマゴチ釣法は,大貫沖などの東京湾伝統釣法 ( と,わきたは表現してみる ) とはチト違う.
その最大の違いはアタリの待ち方 ( 出し方 ) にある. 横浜と大貫の相違点,その相違が釣果に影響する理由,についてわきたが考えるところを以下に述べる.
アタリの待ち方 ( アタリの出し方 )
仕掛投入後,錘で底を取ったら,仕掛 1.5mのうち1mだけ底を切るのは,伝統釣法も横浜釣法も同じ. しかし,それからが違う.
伝統釣法では,アタリを待つ間はひたすら置き竿. たまに底立ちを切り直す程度. 一方横浜釣法では,絶えず底立ちを切り直す. その頻度,公称15秒に1度. わきたの感覚では,10秒に1度でも良いくらい.
この違いは,大貫沖の海底が比較的フラットなため,1度底立ちを切ったたらよほど船が流されでもしない限り水深は変わらないから. おまけに伝統釣法の釣り船は,パラシュートアンカーを打つから,風に流されにくい.
対して横浜沖は,根が複雑に立っている. 船が少し流れるだけで1〜2mも水深が変わってしまう. 絶えず底立ちを切り直していないと,活餌が錘とともに底ベタに這っていたり,逆に中層を泳いでるなんてことになってしまう.

これだけなら,大貫沖の伝統釣法も横浜沖の横浜釣法もそれぞれの海底形状に合わせた釣り方なのだから,釣果に大きな差は出ない筈だ. でも,底立ちを頻繁に切り直すのには,単に仕掛 ( 活餌 ) を水深に合わせること以外の大きな意味がある.
前頁でも書いたとおり,マゴチは底ベタにいて上方の餌を窺っているから,底ベタに這っている餌は目に入りにくい. だからマゴチの興味を引くには,餌を海底から数〜十数センチ上を泳がせなくてはならない.
底立ちを1m切るというと,まず竿先を下げて錘で底を取り,そこから仕掛を1m上げて活餌が泳ぐための遊び分を 50cm残す,というのを想像するが,ここで,単に1m上げるのではなく,仕掛長 1.5m上げて 50cm降ろし,差引き1mの底立ちとする,という動作をイメージして欲しい.
この動作により,ハリスの遊び分が無くなった活餌は一旦底から離れて,その後の仕掛下げとともに再び底に降りてくる. ルアーのボトムバンピングによるフォーリングの演出だ.
伝統釣法では,これら 「 海底 数〜十数cm を泳がせる 」 「 ルアーのフォーリング 」 という演出を,すべて活餌の自由な遊泳に任せている. だから伝統釣法では,ことさらに餌の活きの良さを問題にするのだ. 餌の活きさえ良ければ,海底はフラットだから基本的に置き竿で良い. まさに,活餌の動きとそれに対するマゴチの注目とにお任せの釣りだ.
横浜釣法では,アタリは待って取るものではなく,「 出す 」 ものだ. アタリを出すための釣法だと言える.

ここまで読まれた釣り人は,こんな風に思うかもしれない. 「 活餌の自由な動きに頼る消極的なアピールよりは,活餌にルアーのようなアクションをつける積極的なアピールのほうが有利だというのなら,大貫沖だって横浜釣法のほうがより多く釣れる筈じゃないか? 」
これが実にそのとおりで,濱生丸も,横浜沖にマゴチが寄り付かないシーズン初めの4〜5月/シーズン終わりの9〜 10 月には,大貫沖に船を出す. それでも,釣法は横浜釣法だ. そしてこれが良く釣れる. マゴチ初釣行のときとは違って,濱生丸の船上は大貫沖でもお祭り騒ぎだ.
このことからも,横浜釣法は海底形状の違いに依らず有効だと思っている.

底立ちの切り直しでマゴチのアタリを 「 出す 」 コツをもう1つ.

横浜沖は根が複雑なので,船の流れに合わせて水深が激しく変化する. 濱生丸に乗ってみると分かるが,M船長がしょっちゅう 「 はい,ここはどんどん浅く ( 深く ) なるよ. 底立ち,気を付けてね 」 と船上に声を掛ける. このように水深が急峻に変化するときには,活餌のアピールとしての有効性を考慮すると,底立ちの切り直し方も工夫がいる.
「 仕掛長 1.5m上げて 50cm降ろし,差引き1mの底立ち 」 と書いたが,それは船の流れが遅く,水深の変化がそれほど急峻ではない場合の話.
水深がどんどん浅くなる場合には,上記のように底立ちを切り直してる間にも,水深は浅くなる. 活餌を海底から浮かせたつもりでも,実際には底を這ったままかも知れない. だからこのような場合には,「 仕掛長 1.5m + α 上げて 50cm降ろし,この間水深が浅くなった分 α が差し引かれるから1mの底立ち 」 とするのが良い.
逆にどんどん深くなる場合には,先の方法だと活餌が中に浮いてしまうかも知れない. このような場合には 「 仕掛長 − α 上げて 50cm降ろし,この間水深が深くなった分 α が足されるから1mの底立ち 」 で,フォーリングを演出できる筈だ.
もちろんこの α は,水深変化の緩急の度合いによって調整する.
< 前頁へ ↑トップへ↑ 次頁へ >